第28話:【豆知識】借地非訟事件と介入権とは?地主が知っておくべき法的制度
借地権をめぐるトラブルが発生したとき、通常の訴訟とは異なる「借地非訟(しゃくちひしょう)」という手続きが使われることがあります。
地主・借地人のどちらにとっても重要な制度ですが、一般にはほとんど知られていません。ここでは借地非訟とは何か、そして地主に認められた「介入権」について整理します。
借地非訟事件とは
借地非訟事件とは、借地権に関するトラブルが発生した際に、裁判所が通常の訴訟手続によらず、簡易な手続で判断を下す制度です。
地主が建物の増改築・再築・借地権の譲渡などを承諾しない場合、借地人は裁判所に「地主の承諾に代わる許可」を求めることができます。裁判所は双方の事情を考慮して許可の可否を判断します。
通常の訴訟との違い
| 項目 | 通常の訴訟 | 借地非訟 |
|---|---|---|
| 手続き | 公開法廷で口頭弁論 | 非公開・審問方式 |
| 鑑定費用 | 当事者負担(40〜50万円超も) | 国が負担 |
| 進行 | 当事者主義 | 裁判所が後見的に関与 |
特に鑑定費用が国負担という点は、利用しやすい仕組みになっています。
借地非訟の主な種類
| 種類 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 借地条件変更 | 木造→鉄筋コンクリートなど、建物の種類・構造の条件変更 | 借地借家法17条1項 |
| 増改築許可 | 地主が増改築を承諾しない場合、裁判所に許可を求める | 借地借家法17条2項 |
| 賃借権の譲渡・転貸許可 | 借地権付き建物の売却・転貸を地主が承諾しない場合 | 借地借家法19条1項 |
| 競売・公売に伴う譲受許可 | 競売で借地権を落札した買受人が地主の承諾を求める場合 | 借地借家法20条1項 |
| 介入権(地主の優先買取) | 上記の譲渡・競売許可申立がある場合に、地主が優先的に買い取る権利 | 借地借家法19条3項・20条2項 |
介入権とは
介入権とは、借地非訟の手続きの中で**地主側に認められた「優先買取の権利」**です。
借地人から賃借権の譲渡許可申立、または競売・公売に伴う譲受許可申立があった場合、地主は「他の第三者に渡すくらいなら自分が買い取る」と申し出ることができます。
介入権の流れ
裁判所が定めた期間内に介入権を行使すると、
- 鑑定委員会(弁護士・不動産鑑定士・建築士で構成)が意見書を提出
- その意見をもとに、裁判所が**相当の対価(買取価格)**を決定
- その価格で、地主が優先的に借地権と建物を買い受ける
という流れになります。
介入権が使われる典型的なケース
- 競売で見知らぬ第三者が借地権を落札し、地主が認めたくない場合
- 借地人が第三者への売却を求めたが、地主が想定より低い評価額で買い取れると判断した場合
- 借地関係を解消し、完全な土地所有権を取り戻したい場合
介入権行使のポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 行使できるタイミング | 裁判所が定めた期間内に限る(期間を過ぎると行使不可) |
| 買取価格の決定 | 鑑定委員会の意見をもとに裁判所が決定 |
| 価格交渉はできない | 裁判所が決定した価格での買取となり、値引き交渉は不可 |
| 申立先 | 借地の所在地を管轄する地方裁判所(合意があれば簡易裁判所も可) |
| 代理人 | 代理人を立てる場合は弁護士に限られる |
まとめ
借地非訟は「最後の手段」とされる制度ですが、地主にとっては介入権という形で自分の権益を守る手段が用意されています。
- 鑑定費用が国負担で、当事者の経済的負担が小さい
- 非公開・簡易な手続で進む
- 裁判所が後見的に関与し、円満な解決を目指す
ただし、行使期間や手続きには厳格なルールがあるため、トラブルが発生した際には早めに弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
底地・借地のような長期にわたる権利関係こそ、こうした「専門の制度がある」ことを知っておくと、いざという時の選択肢が広がります。
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