第24話:競売の入札——「訳あり物件だから高くは入らない」と読んだ私の誤算
前回までの続きです。話し合いは平行線のまま、借地権は競売にかけられることになりました。
底地権者である私としても、競売の状況は無関係ではいられません。今回はそのとき私が何を見て、どう判断し、どんな結果になったかをお伝えします。
競売資料の確認
借地権の競売が始まると、誰でも閲覧できる資料が公開されます。私が確認したのは以下です。
- 評価書:裁判所が依頼した評価人が作成する物件評価レポート
- 現況調査報告書:執行官が物件の現状を調査した報告
- 競売申立債権額:いくらの債権で競売が申し立てられたか
- 落札価格の見込み:過去の事例や周辺相場からの推測
これらを総合して、自分なりの「いくらまでなら買って良いか」を見極めます。
物件の状況——訳あり要素の多さ
資料を確認した結果、明らかになったのは以下の点でした。
① 築40年超の木造建築
アパートとして家賃収入はあるものの、建物は築40年以上の木造。木造の法定耐用年数は22年なので、大幅に超過しています。
これは融資面でも不利になりやすく、新規購入者にとってはハードルが高い要素です。
② 容積率オーバー(既存不適格)
土地の容積率に対して、現状の建物が容積率オーバーで建っていました。いわゆる既存不適格建築物です。
これは「今の建物はそのまま使えるが、建て替えると今より小さい建物しか建てられない」状態を意味します。資産価値・将来の再建築計画に大きく影響します。
③ 地主と借地権者の間で争いあり
そして資料には、これまでの経緯——地主と借地権を巡って争いがあるという記載もありました。
買い手にとっては「地主との交渉が必要」「トラブルを引き継ぐ可能性」を意味します。
私の判断|「訳あり物件、高値は付かないだろう」
これらの要素を総合して、私はこう判断しました。
「かなり訳ありの物件なので、高値では落札されないだろう」
そこで、私は買受可能価額に少し上乗せした程度の金額で入札しました。
買受可能価額というのは、競売の最低入札価格(売却基準価額の80%)のことです。「安く拾えれば理想、無理なら諦める」というスタンスでした。
結果——落札できず
しかし、結果は落札できませんでした。
実際の落札価格は、私の想定をかなり上回る高額でした。
なぜ高値が付いたのか
当時はちょうど収益不動産ブームが始まっていた時期でした。
- 低金利を背景に、不動産投資家が増加
- 「訳あり物件こそ利回りが高い」として、リスクを取って攻める投資家が多かった
- 競売は「お得に買える場」として注目されていた
私のように「リスクを冷静に見積もる」スタンスの投資家もいれば、「リスクを承知で攻める」スタンスの投資家もいる。市場には異なる読み方をする人が混在しています。
結果として、私の見立ては市場の熱気を読み違えていた形になりました。
この経験から学んだこと
競売の入札では、以下の3点が大切だと改めて感じました。
- 物件のファクトを冷静に分析する(できた)
- 市場全体の温度感を読む(ここを軽視していた)
- 入札価格にいくつかのシナリオを持つ(今回は1パターンしか作らなかった)
「訳あり物件なら必ず安く落札される」というのは思い込みでした。需給バランスが整わなければ、訳あり物件でも高値が付くことがあります。
まとめ
底地権者として借地権の競売に参加するのは、完全所有権化への大きなチャンスです。しかし、市場環境次第では、思った価格では取得できないこともあります。
それでも、競売参加に向けた情報収集と分析の経験は、その後の不動産投資にも生きてきました。
この話はまだ続きます。
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